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CMや広告の撮影現場ってどんな所?撮影スタジオの舞台裏に潜入してみた

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8月某日、当社のサイト制作関連の撮影でお世話になっている、代官山スタジオ(株式会社ユーアール)を取材させて頂きました。
 
その名の通り代官山にある同スタジオは、ほかにも、中目黒、白金、月島など都内に合計五か所の系列スタジオがあり、大手企業のCMやファッション誌面などの撮影現場を日々支えています。
 
中でも、代官山スタジオは今年30周年を迎え、スチールはもちろん、デジタル・動画撮影のカテゴリも牽引してきました。
 
知っているようで知らない、撮影スタジオの舞台裏とは、一体どんなところなんでしょうか?なぜ30年もの間、クリエイティブな現場の最前線であり続けているのか、その理由も知りたいところです。
 
今回は、スタジオのフロント役としてセールスマネージャーの田村しのぶさんにお話を伺いました。
 
―代官山駅から徒歩3分で、とても便利な立地ですね。このような大型の撮影スタジオが街中にあるのは、珍しいのではないですか?
 
こちらにはスタジオが5面あるのですが、このくらいの規模でしたらさほど珍しくないですね。ただ代官山という立地は、近くにクライアントやモデル事務所もあるので、利便性の高さを感じて頂けると思います。今日もほぼ全てのスタジオで撮影がおこなわれているのですが、一部をご案内しますね。

1、スタジオの中

技術が詰まった舞台裏


 
ここは「1面Rの白ホリゾント」というタイプのスタジオです。Rのホリゾントとは壁と床の境界をカーブ状に埋めて境目を無くし、影ができないようにした背景です。前から撮ると白背景一色の奥行きがひろい画になります。
 
もちろん白だけでなく、ほかに石壁やグリーン一色の合成用クロマキーを背景にした撮影も可能です。ちょうど今、スタッフが背景を取り換える実務テストを受けていますが、背景が紙の場合は撮影ごとに捨てて、新しいものを用意します。前述のRホリゾントの場合は、白いペンキを上塗りすることで保っているので、薄っすらと小さな汚れが付いただけでも、ムラができないように、床も背面も全て塗ります。なので、スタッフは塗装技術も高いですよ(笑)
 
―白ホリゾントの大きさは、奥行き・高さともに5mぐらいでしょうか。少しでも汚れたら塗装するとは、かなりの手間ですね!
 
ホリゾントをもつ撮影スタジオでは日常的な業務ですが、一般的には知られていないかもしれませんね。ほかにもそうした実務はたくさんあり、当スタジオでは背景紙の交換や照明の組み立てなどに、実務試験のカリキュラムを設けています。さきほどスタッフが受けていたテストのように、それぞれに段階をもうけて先輩スタッフが採点しています。
 
―きちんと体系づけられた教育カリキュラムがあることで、もれなく技術が習得されていくのですね。実際にスタジオを使ってテストや練習を行うとなると、いつでも出来るわけではなさそうですが。
 
主に業務を終えた後に、時間と場所を設けて実施しています。現在スタッフは40名ほど在籍していますが、おのおの約3年でカリキュラムを終えて“卒業”となります。
 
―仕事を終えたその後にですか!じっくりと3年間となると、労力もかかり大変だと思うのですが、どういったお考えで導入されているのですか?

人材の育成制度への思い

たとえば照明機材の組み方ひとつにしても、一定のレベルに達したスタッフの場合、どの機材をどう配置して撮影したのか、画像から理解できます。
そんな風に、フォトグラファーの詳しい指示がなくてもある程度予測して動ける、要求に応えられる、というスキルをもちあわせているのが理想です。
 
というのも、撮影は感覚的な意思疎通もある仕事ですから、スタッフとフォトグラファーの相性が、進行に影響し兼ねません。しかし、スタッフによって対応力に差が出ないよう、またどんな場面にも対応できるよう修練していこう、という意気込みで系列スタジオ全てに教育カリキュラムを取り入れています。
 
―スタッフのレベルが高まれば、それ自体がスタジオの信頼になりますね。こうした教育カリキュラムは、同業他社でも一般的に導入されているのですか?

2、スタジオ業界全体

人材・業界の輪


 
教育制度を設けていないスタジオもあるようなので、当社でスタジオ実務の経験があれば、業界関係者には、一連の実務ができる人材だとみなされるようです。一連の実務がこなせるということは、フォトグラファー付きのアシスタント、つまり「直(ちょく)アシ」として修業出来るレベルにあるので、修行しながら独立を目指すことも可能になります。
 
独立するまでの道のりは決して楽ではないので、代官山スタジオで下積みをしたスタッフがフォトグラファーとしてスタジオを利用してくれるようになると、その再会が本当に嬉しくて、感慨深く思います。
 
― そうした人のつながり、というか“人の輪“は、スタジオの基盤でもあり、強みとなりますね。
 
そうですね。実は技術の習得だけでなく、「OB資格」という、教育カリキュラム修了後にもらえる資格も設けています。スタジオや機材レンタルの利用料が割引になる特典が含まれるので、スタジオから巣立った後の結びつきを更に強めていると思います。
 
―人材の教育価値を、長い目で捉えていらっしゃるのですね。30年の歴史を重ねて、こうした方針が確立された背景には、時代の変化なども影響しているのですか?

3、撮影スタジオ業界の変遷

今から30年前は、まだ大規模な撮影スタジオもなかったので、そこに着目した経営母体の佐藤商会がスタジオ事業を始めました。当時はバブルの好景気なので、撮影予算も潤沢な企画が多かったようです。そこから景気が下向くにつれて撮影スタジオも淘汰され、現在は価格か、サービス(スタッフ)のいずれかに特化したスタジオが生き残る、二極化傾向にあると思います。
 
正直なところ機材など設備の面では大きな差がつかないので、予算やフォトグラファーの態勢によって何が必要とされるか、というポイントでスタジオが選ばれていると思います。例えば、フォトグラファーに直アシがいれば、スタジオ側のスタッフは削っても良いですし、逆に直アシがいなければスタジオ側のスタッフが重宝される、ということです。
 
―なるほど、利用する側の要望に合わせて、セグメント化されていますね。その中で、御社の優秀なスタッフ、OBとの結びつきは大きな強みでしょう。30年間の信頼も、代官山スタジオのブランド要素だと思いますので、40周年、50周年に向けて、これからもクリエイティブの最前線で撮影を支えて頂きたいと思います。今日はありがとうございました。

取材を終えて

印象に残ったのは、技術習得に取り組む若いスタッフのひたむきな姿です。現場で実務を経験しながら、すぐに役立つ技術も習得できるという環境が、モチベーションを高めているのでは、と感じました。今後、どのようなモチベーションでスタッフの方が仕事に取り組まれているのか、という点にも迫ってみたいと思います。
 

代官山スタジオ(株式会社ユーアール)

スチールはもちろん、デジタル・動画撮影のカテゴリも牽引してきた撮影スタジオです。都内に系列スタジオが5か所あり、機材レンタルのほか、ハウススタジオやキッチンスタジオでの撮影も可能です。今年30周年を迎え、大手企業のCMやファッション誌面などの撮影現場を日々支えています。

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Livewire 編集部Livewire 編集部
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